トリメブチンの代替薬は?

腎臓内科

入手困難な薬品のひとつに、トリメブチン錠がある

先発品であるセレキノン、後発品トリメブチンはどのメーカーも軒並み入手困難

とうとう、先発品も後発品も在庫0となり、どの卸からも入らなくなった

仕方なく、処方医に代替薬の提案を申し出ることになった

そもそもトリメブチンの作用機序ってなんだっけ?

処方提案する代替薬を考えてみた

トリメブチンの作用機序

先発品のセレキノンの添付文書には「消化管運動調律剤」とある

完結にまとめると・・・

胃にも腸にも効く
運動が亢進している場合は抑制、運動が抑制されている場合は亢進する
末梢性制吐作用あり
詳しくは以下の通り(セレキノンの添付文書より引用)

消化管平滑筋に対する作用


 トリメブチンは、平滑筋細胞において、弛緩した細胞に対しては、Kチャネルの抑制に基づく脱分極作用により細胞の興奮性を高め、一方、細胞の興奮性に応じてCaチャネルを抑制することで過剰な収縮を抑制することが推測される。

オピオイド受容体を介する作用

 トリメブチンは、運動亢進状態にある腸管では、副交感神経終末にあるオピオイドμ及びκ受容体に作用して、アセチルコリン遊離を抑制し、消化管運動を抑制する
一方、運動低下状態にある腸管では、交感神経終末にあるμ受容体に作用してノルアドレナリン遊離を抑制する。その結果、副交感神経終末からのアセチルコリン遊離が増加し、消化管運動を亢進する

胃運動調律作用


(1)モルモット摘出胃前庭部の輪状筋標本に対し、10‒5g/mLで自動運動の振幅を減少させる。一方、同標本の28℃での不規則かつ減弱した運動に対しては頻度及び振幅を増加させ、規則的な律動性収縮運動へ移行させる(in vitro)。


(2)胸部迷走神経を切断した麻酔イヌの不規則な胃運動に対し、3mg/kgの静脈内投与で規則的な胃運動に移行させる


(3)消化器疾患患者の胃幽門部運動に対し、1mg/kgの静脈内投与で運動機能亢進群では運動抑制が認められる。一方、運動機能低下群では運動亢進が認められる

消化管連動運動誘発作用


ヒトの消化管運動に対し、4~6mg/kgの空腸内投与で生理的な消化管連動運動の誘発が認められる

胃排出能改善作用

上腹部消化器不定愁訴を有する慢性胃炎患者に対し、200mgの経口投与で、胃排出能の低下している場合には亢進させる。一方、亢進している場合には抑制傾向が認められる。

腸運動調律作用



(1)モルモット摘出結腸標本に対し、10‒5g/mLで筋の緊張度が低い場合(低負荷時)にはトーヌスを増加させる。一方、筋の緊張度が高い場合(高負荷時)にはトーヌスを低下させ、振幅を減少させる(in vitro)。
(2)過敏性腸症候群患者の心理ストレス負荷による大腸運動亢進に対し、300mg経口投与で運動抑制が認められる
(3)ネオスチグミン負荷により運動亢進したヒトの回腸、上行結腸、S状結腸に対し、50mg静脈内投与で、負荷前のレベルまで運動を抑制する。

食道下端括約圧(LESP)調節作用


麻酔イヌにおけるテトラガストリン負荷誘発食道下端括約圧上昇は、0.6mg/kg静脈内投与で低下する。一方、セクレチン負荷誘発内圧低下は上昇する。

消化管平滑筋直接作用


(1)モルモット摘出胃前庭部の輪状筋標本における自動運動抑制作用は、アトロピン、フェントラミン、プロプラノロール及びテトロドトキシンの存在下でも発現する(in vitro)。

(2)モルモット摘出回腸のアセチルコリンによる収縮を非競合的に抑制する(in vitro)。また、麻酔イヌの消化管運動に対する作用は胸部迷走神経を切断しても発現する。

末梢性鎮吐作用


イヌにおいて、アポモルヒネ誘発の嘔吐に対する抑制作用は弱いが、硫酸銅誘発の嘔吐に対し3mg/kgの静脈内投与又は60mg/kgの経口投与で嘔吐発現潜時を明らかに延長させる。

トリメブチンの適応

  • 慢性胃炎における消化器症状(腹部仏痛、悪心、噯気、腹部膨満感)
  • 過敏性腸症候群

トリメブチンの代替薬をメーカーに確認

先発品のセレキノンのメーカーに電話にて確認

まず、前提として、同じ作用機序の薬品は存在しないこと

そのうえで代替薬を考えると、適応によって異なるとのこと

適応に対する代替薬は以下の通り

  • 慢性胃炎
    • プリンペラン
    • ガスモチン
    • ナウゼリン
  • 過敏性腸症候群
    • 下痢型:イリボー
    • 下痢便秘型:コロネル/ポリフル
    • 便秘型:リンゼス

今回の場合、どうしたか?

該当患者さんが透析されている方だったので、透析中でも投与可能な薬剤かを確認した

薬剤名透析患者への投与方法
プリンペラン尿中未変化体排出率は低いものの、透析患者では肝クリアランスが低下するため維持量は1/2~1/3に減量する
ガスモチン透析患者への投与方法に言及した文献は少ないが、通常量投与しても顕著な副作用の発現を示さないことから減量の必要はないものと思われる
ナウゼリン減量の必要なし
イリボー設定されていないが、尿中未変化体排出率が低く、おそらく減量の必要はない
コロネル/ポリフル消化管から吸収されないことより、減量の必要はないと考えられるが、離脱したCaによる高Ca血症発現に注意
リンゼス減量の必要なし

白鷺病院 CKD患者に関する薬剤情報より検索

以上の情報と、薬局の在庫状況から、処方医に疑義紹介

トリメブチンと同じ作用機序の薬品は存在しないが、適応から代替薬を提案

透析患者さんのため、提案したのは、ガスモチン、ナウゼリン、イリボー、コロネル、リンゼス

医師からの返答は「今回は削除で」

え、削除!?なんだか申し訳ない気持ちになった

コメント

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